沼正三_『手帖』_第59章_ポッペアのミルク風呂で

第2巻：家畜への変身
（第32章～第67章）

第59章　ポッペアのミルク風呂で

【内容】　ポッペアの除毛係となってミルク風呂に侍る妄想を論ず
(第57～59章は女性の入浴がテーマ)

59-1
		『手帖』のキャプション「私の舌は鉤針で引き出され、舌先は鋏でチョン切られる」（《奇ク》挿画）

【馬・註】
本章では、ローマ皇帝ネロの妃、ポッペア・サビナがミルクで入浴したとの逸話から、沼が、彼女に侍る数十人の奴隷の一人として恥毛を刈り取る係にさせられ、ちょっとした失敗により、罰として舌先を切られる・・・という妄想を展開している。

↓59-1の大判画像です

《奇ク》1954年四月号『あるマゾヒストの手帖から』第五一ポッペアのミルク風呂で　挿画

59-2
		『手帖』のキャプションポッペアの入浴（クーン・レグンター筆）驢馬が続々と連れられて来て搾乳されている……

↓59-2の大判画像です

Die Weiberherrschaft in der Geschichte der Menschheit（「女天下」)のキャプション

Das bad der Poppaa 　　　　　Zeichnung von J. Kuhn-Regnier (第Ⅰ巻p346)

馬仙人の自由研究

クーン・レニエ

	59-2を描いたのは、フランスのイラストレーター、ジョゼフ・.クーン・レニエ(Joseph Kuhn-Regnier, 1873-1940）。本章のキャプションでは「クーン・レグンター」と表記されています。"i"の字が"t"に見えたのでしょうか。彼の絵は、『手帖』　第４巻　第118章　「苦痛より凌辱を」　にも紹介されていますが、そこではＪ・クーン・レニエと表記されています。クーン・レニエは「ラ・ビ・パリジェンヌ (La Vie Parisienne)」などの雑誌に、主に古代ギリシャやエジプトなどをモチーフにしたイラストを寄稿していました。馬派として特に注目すべきは、ギリシャ神話に登場する半人半馬のケンタウロスに、美少女がうち跨った絵を何点か描いていることです。第118章に紹介されているのも、まさにそうした例の一つです。ですから、そうした絵を、第118章での「関連イラスト」として掲載してもいいのですが、とてもそこまで待てないので、その一部をこの際載せちゃいます。

三人の美少女がそれぞれのケンタウロスに跨っての競走。

出発地点・途中・ゴールでの三者三様の姿態が描かれています。

中でもとりわけ愚仙人が惹かれますのは、出発地点の真ん中に描かれたカップル。

ほのぼのとした絵柄ですが、愚仙人には、
ＳＭ雑誌によくあるようなどぎつい絵や写真よりも、
ずっとエロチックに感じられます。

ケンタウロスに跨り、ほほ笑む少女。
彼女の容貌も、表情も、円やかで柔らかな肢体も、優美で艶やかです。
臍まで見えるトップレスというのが、またエロい。
美少女に跨られ、＜嬉しさ＞と＜恥ずかしさ＞と＜誇らしさ＞が交錯するケンタウロス。

愚仙人のＳＭ観を体現した、惚れ惚れするような見事な絵でございます。

競走途中とゴールの絵も貼っておきます。

	『手帖』と『ヤプー』

贅沢な入浴
『手帖』本章では奢侈の象徴としてミルク風呂が描かれています。『ヤプー』にもミルク風呂が登場します。イース貴族ともなれば、牛や驢馬の乳ではなく、テラ・ノヴァ星産の珍獣オロンの乳です（『ヤプー』第一八章　神々の起床　2 霊乳浴と唇人形キミコ）ミルク風呂の他、香水蒸気の波動を味わう「香楽浴」や、香水原液を温めた「香水湯」入浴も描かれています（同前　1 肉反吐盆と香楽浴）贅沢な入浴を楽しむ貴族。そして、入浴中や入浴後の彼らの安楽・美容に奉仕する下僕・奴隷。『手帖』と『ヤプー』に描かれた、同じテーマのお話です。

「第五九章　ポッペアのミルク風呂で」（潮出版社版）　(←外部サイトへのリンク)

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