第2巻：家畜への変身
（第32章～第67章）

第57章　女体沐浴

【内容】　女性が沐浴した残り湯を飲むこと（浴水飲用）のマゾヒズムを論ず
(第57～59章は女性の入浴がテーマ)
 57-1

『手帖』のキャプション
ディアナの沐浴（アドリエン・バッカー筆。部分）（アクチオンは、これを窃視したために鹿にされてしまうのだ。ディアナについては、第一章本文および第八章挿画解説参照）

↓57-1の大判画像です

Adriaen de Backer um 1630/32-1684: Diana im Bade, 1682. Kunsthalle, Bremen.
元の絵では、ダイアナ（ディアナ）は右下に小さく描かれています。



【ダイアナ（ディアナ）の沐浴】
Diana Leaving her Bath (Guillaume Edouard Marie Dubufe,1893)
Diana at the Bath (James Ward, 1830)
ダイアナ（ディアナ）の沐浴をテーマにした絵画はいろいろあります（頭に付けた三日月型の飾りが目印となって、描かれているのがダイアナだとわかります）。

しかし、本章で紹介されているアドリエン・バッカーの作品のように体の大きな部分を浸している絵は意外に少ないようです。





≪奇ク≫1954年3月号「あるマゾヒストの手帖から」 第四八 揮発した踊り子　の挿絵。


【馬・註】
本章は以下のように始まります。

野村胡堂の『新奇譚クラブ』中の一篇に『揮発した踊り子』というのがある。

女主人公は特殊体質の肉体を具（そな）えており、体から分泌するものは、汗でも尿でもとてもよい匂いがするのである。

主人公はある画家の妻だった彼女を手に入れて溺愛する。

彼女を浴槽に入れておいてそこへ各種の酒を注ぎ、彼女の香る汗と混和させて、独特のカクテルを作って愛飲する痴行まで書かれている。

《奇ク》の挿画は、この話に想をえたものでありましょう。



57-2

『手帖』のキャプション
ネクタール・シャワ（ローラ・モンテスを風刺した1847年の木版画。衛兵の姿で、彼女の雨を浴びて喜んでいるのが誰か暗示されている。ローラ・モンテスについては第28章を見よ）

↓57-2の大判画像です

Die Weiberherrschaft in der Geschichte der Menschheit（「女天下」)のキャプション

Lithographie auf Lola Montez. 1847 (第Ⅲ巻p.299)

【馬・註】
『手帖』のキャプションには「木版画」とあるが、原著のキャプションではLithographieなので、「木版画(Holzschnitt)」ではなく「石版画」ですね。



≪奇ク≫1954年4月号「あるマゾヒストの手帖から」　第五十 美姫の水浴　の挿絵。

【馬・註】
本文中に

一四世紀のカスチリア・レオン国王ペドロ、弟を殺して「残忍王」の名を得た人だが、スペインはセヴィリアの御城（アルカザル）の中庭なる大プールで、寵姫マリア・デ・パディリアに浴を賜り、群臣を顧みて彼女の泳ぎ廻るプールの水を飲ましめたという

という一節があります。
《奇ク》の挿画は、この話に想をえたものでありましょう。



『手帖』と『ヤプー』

白人女性（男性もだけど）が入った後の（垢交じりの）湯を飲む描写として

香水湯が捨てられ、新しく吹き出す。

垢を流しただけで捨てられるのはもったいないようだが、そのまま黒奴食糧に使われるのでむだに捨てられるわけではない。石鹸のようなものを使わないから、引用しても体に害はない。

貴族の浴後の香水に限らず、ただの湯を使う平民の浴後水でも、単に放射線殺菌のみでべつだん垢は除かず、そのまま黒奴用水道に回って引用される。

黒奴酒導管以外でもこうして「白人の下水が黒奴の上水」という関係が成立しているのであった。（第18章　神々の起床　第１節　肉反吐盆と香楽浴）

という一節があります。
女性が沐浴した後の湯を飲むのも、汚物嗜好の一つかもしれません。
しかし、単なる「汚物」ともまた違うような。

魅力ある女性の尿を「聖水」として敬うように、彼女が入った後の湯は、拝跪すべき尊い宝物として扱われるべきである・・・というあたりが、そして、そう考えることによって惹起されるＭ的感興が、本章の趣旨と言えるでしょう。



「第五七章　女体沐浴」（潮出版社版）　(←外部サイトへのリンク)


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