第2巻：家畜への変身
（第32章～第67章）

第40章　人間ポット

【内容】　飲尿観念からの人間尿器（ポット）空想を論ず

(第39～44章は汚物愛好がテーマ)
 40-1

『手帖』のキャプション

ミネラル・ウォーター（一八二〇年ごろのフランス銅版画。上の湧き水の木陰にお嬢さんがしゃがんでる……）　


↓40-1の大判画像です

Die Weiberherrschaft in der Geschichte der Menschheit（「女天下」)のキャプション

Die Mineralquelle Franzosischer Kupser Um 1820 (第Ⅲ巻p289)




  40-2

『手帖』のキャプション
「また降ってきた」（弁当と水筒を開いたところである）(ムートン筆)　


↓40-2の大判画像です

Die Weiberherrschaft in der Geschichte der Menschheit（「女天下」)のキャプション

Franzosische Ansichtskarte (第Ⅲ巻p311)



【馬・註】
本章で、沼は、
女主人の尿瓶（ピス・ポット）となって、小水を飲まされる（「口を張りてゆばりを承（う）くる」）空想は楽しいが、実現は中々困難である　
旨を述べ、その理由を３つ挙げて説明しています。

（１）排泄量に嚥下が追いつかない　
排尿は非常な勢いで間断なく継続されるに反し、嚥下は呼吸との関係で少量ずつ」断続的になしうるのみだから、たちまち口腔からあふれ出てしまうに違いないのだ。

（２）女性の側の心理的抵抗　
単なる排泄物の摂取ではなく、直接これを口に受ける典型的な人間便器（尿瓶も含めた意味で）のプレイということになると、女のほうには、男の側以上に禁忌感の増大がある。

（３）男性の側の心理的禁忌　
心理的禁忌を排除するだけのマゾ衝動を持っているかどうか。足りなければ、冒頭の例のように空想だけで終わってしまうだろう。




【馬・註】
沼正三の≪奇ク≫初登場の記事は、１９５３年４月号の「神の酒（ネクタール）を手に入れる方法―芳野眉美君に―」でした。

沼は、「あゝ、女の尿が飲みたい」という芳野眉美の「硝子便所」に応える形で、東京中野のある素人下宿に下宿していたときの経験を語っています。

その下宿は、若夫婦が経営していましたが、奥さんは美人で、しかも主人を尻に敷いているひとでした、とのこと。
記事は、若い日の沼が、いかに便器に仕掛けをして、彼女の尿を入手したかを、詳述。約３ヶ月間、毎日飲んでいたという体験をつづったものでした。

芳野眉美と同じく、沼も、「あゝ、女の尿を飲みたい」という強い願望を抱いていたことが伺えます。




『手帖』と『ヤプー』
『ヤプー』でも
第六章　便所のない世界、　第七章　第一の経験
で、「飲尿観念からの人間尿器（ポット）空想」
「食糞観念からの人間便器（トイレ）空想」に並みならぬ情熱を傾けています。

もっとも、今でこそ変態界では「当たり前過ぎる」みたいな
飲尿・食糞ですが、『ヤプー』を≪奇ク≫に発表した当時は、
≪奇ク≫という変態雑誌の読者の間でも
「肉便器という字面を見ただけで読む気がしない」
とかいった消極的意見が多く、
そのため、沼はすっかりやる気をなくしたことが、
『ヤプー』あとがきから伺えます。
『ヤプー』の「飲尿観念からの人間尿器（ポット）空想」に基づく描写から、
刺戟的なものを二つばかり引用しましょう。


女神様によっていろいろな癖があるぞ。

こちらの顔がはいったとたん、すぐご下賜なさる方、
いったんこちらの顔を締めつけてからなされる方、

お年齢（とし）を召した方のときには、まずこちらの舌で刺激を加えて差しあげることが必要なこともあるから、注意せいよ。
さ、実習……

（第7章 第一の経験 第3節 ある肉便器の個体史）
*この文章の影響で、お年齢を召された白人女性の写真など見ると、彼女の股間に頭部を埋め、舌で刺激を加えて差しあげて、口腔にほとばしる、暖かくて独特の香気を放つ塩辛い液体を味わってみたいという妄想に駆られるようになりました。

こちらの顔がはいったとたん、すぐご下賜なさる方、
いったんこちらの顔を締めつけてからなされる方、
という表現も、その状況を想像すると、頗るエロチックでございます。


↑この文章に影響されたお絵描き。
ぽちっとで大画像　Click to enlarge


「立小便とは厠畜(セッチン)を使わない放尿のことだ。

セッチンは、各建物の各室のみでなく、船や車などの大型交通機関の客室にまで備えられ、排泄回数の多いイース国民の便宜を図っているが、もしこうしたセッチンのない所ではどうするか？

身近に黒奴でもいれば「飲むか？」といちおうその意志を訊く。
ただそれは形式だけのことで、黒奴は必ず「はい」と答えて口を開くことになっている。
(中略)
黒奴にもヤプーにも与えず、ただ地面に吸わせてしまうようなことは、本来、イース国民は決してやらない」（J・シモンズ『風俗談義』から）
「家畜人ヤプー」第28章　矮人の死・黒奴の死　第3節　ある黒奴の死と祝福




「第四〇章　人間ポット」（潮出版社版）　(←外部サイトへのリンク)


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