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【馬・註】
本章は全体として、
「マゾヒズムは一定の刺戟によって性的快感を味わう反応の一種である。この場合、同じ量の刺戟では快感は減じてくる。求められる刺戟は濃厚化し、破綻は免れ難い。
前章に例をとれば、笞では駄目で鞭が必要になり、その鞭も効かなくなる時が来るだろう……」
という命題に対する反論となっています。
刺戟の漸増と言えば、遠藤周作『月光のドミナ』にも、あるマゾヒストが
「最初は長い間の望みもやっと充たされたと思うんだが、やがてそれだけでは飽きがくるんだ。もっとあたらしい方法が欲しくなる。すぐそれも駄目になる。次の刺激を考える。最後はどんな方法を考えても無駄なんだ」
と告白するくだりがございます。
これじゃあ、まるで、麻薬に手を出した人が、最初は少しのヤクで満足していたのに、より強い刺戟を求めて暫時量を増やし、ついには廃人になるのと同じですな。
「肉体的受苦ではなく精神的屈辱に重きを置くタイプのマゾヒストの場合には、実行行為の
過激化は必ずしも必要ではない」というのが、沼の主張です。
私は微視的マゾヒズムをもって、現実的マゾヒズムすなわちマゾプレイその他の実行行動に完全に代置しうるとは考えない。
ただ現実的マゾヒズムのみから、刺戟の増量の不可避を必然視するのは誤りであって、観念的マゾヒズムにおける微視的境地を開拓することによってマゾヒストはいくらでも至るところに性的快感を与える刺戟を、夢想の種を見いだすことができるということを述べてみたにとどまる。
もとより散発的な小銃弾であるから、砲弾に代えることはできぬ。
私自身妻とのマゾヒスティックな遊戯を毎夜やめられない。
しかしその遊戯が物足りなくなってきた時、その方向で遊戯を悪どくしなくても、気を変えれば、微視的な資料が続々と私を喜ばせてくれるのである
(挿入の写真は、いずれも私のマゾヒズムをうずかせた。読者諸君、自ら検せられよ）。
「マゾヒズムに対する習練・慣熟の度合い」が進んでいるかどうかはともかく、「普通人が刺戟とは思わないほどの軽い刺戟にも感じうるようになってくる現象」をして「微視的マゾヒズム」と呼ぶならば、それはまさに愚仙人の身に日夜起こっている現象でございます。
言い換えるなら、「あらぬ妄想を掻き立てられる」というやつでございますな。
浜の真砂は尽きるとも、世に妄想の種は尽きまじ
弊サイトの「お絵描き」なども、もともとマゾヒスティックとは言えないような写真ながら、愚仙人の脳眼は「あらぬもの」が見えた結果の産物が多いのでございます。
それにしても、なんぢゃな。
「私自身妻とのマゾヒスティックな遊戯を毎夜やめられない」
という一文に、沼さんの私生活が垣間見えますな。
「表の顔」が暴かれるとは予想だにしていなかったゆえか、それとも、奥様とそういう遊戯に耽っているとの情報自体フィクションか・・・・
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