『手帖』のキャプション
女に撲ち殺されるオルフェウス（デューラー筆）（ギリシャ神話にある画題である。本文の鞭刑に当たるオリエントの杖刑の執行と見てよい）

【馬・註】
笞刑と鞭刑の違いにつき、本章では次のように述べています。

一口にむち刑といっても笞刑と鞭刑とがどのくらい違うものかということをはっきり示す文章を一つあげてみよう。アントン・チェーホフの『サガレン島』太宰俊夫訳による（近ごろ岩波文庫にも中村融訳二冊本が入った）。

　チェーホフは一八九〇年に樺太（サガレン）を訪ねている。当時ここは流刑地になていた。彼は囚人および流刑移民の状態をあらゆる方面から描いているが、ここに引用するのは、囚人に対するむち刑について記述したところである。

中略　（『サガレン島』からの引用など）

笞刑には無感覚になっている囚人でさえも金切声をあげるのが鞭刑であるということは、はっきり認識してもらえたと思う。

沼によると、鞭の与える苦痛は、笞よりはるかに大きいらしい。
鞭の一打ちで、生涯残るような深い傷ができるんだそうな。

前章附記第四では、森本愛造（森下高茂）氏のbull-whipについての下記説明を引用しています。
白人女性の弱い力でも、そのコツを心得れば、一鞭で黒人の背の皮を剥ぎ、二鞭で肉を抉り、三鞭で死に至らしめることができると、ビルリンガー博士が実例を挙げて説いています。

一方、巷のＳＭ愛好者の弁などを拝見しますと、一本鞭よりも、笞の仲間であるケインによる責め苦の方が激烈であるとの印象を受けます。

本格的な「一本鞭」といえども、所詮は遊戯用。本物の懲戒用の鞭、就中bull-whipなどに比べると、畢竟、玩具に過ぎない・・・ということなのでしょうか？

専門家のご教示を乞いたいところでございます。