『手帖』のキャプション
ドン・ブランナス・アレラの『過酷な回想』の表紙画　（むちのいろいろが見られる。なお、西洋婦人がシナ人を罰している図柄にも注意。第三九章冒頭で引いたミルボーの『刑場』、同章の挿画その他、シナの刑場が西洋婦人に興味を持たせることはこの種の文献によく見られる）

『手帖』のキャプション
「あら、パパを起すのをすっかり忘れてたわ」
（Ｖ・パーチ筆）（壁にあるのがカウ・ハイドの牛追い鞭）

【馬・註】本章に記された「むち」の分類
(Ａ)動物製：鞭　(英)whip　(独)Peitsche　(仏)fouet
　 (1)革鞭（刑罰用）：(独)Knute, Karbatshe, Nagaika, Kantschu　(英仏)knout
　　　　・スペイン鞭：(英)Spanish whip
　　　　　　　…鞭索の途中に結び玉を作ったり、鉄丸を付けたりしたもの
　　　　・九条鞭：　(英)cat-o'-nine-tails　(独)Neunschwanzige　Katze
　　　　　　　 　　 (仏)le chat a neuf queues, martinet
　　(2)馬鞭：(英)horse-whip
　　　　・乗馬鞭：(英)riding-whip　(独)Reitpeitsche　(仏)cravasche
　　 　 ・猟場鞭：(英)crop…先端が輪になった革ひもになっている。
　　　　・狩猟鞭：(英)hunting whip…長い鞭索がついている。犬鞭と兼用
　　　　・馭者鞭：(英)coach-whip　(独)Juckerpeitsche, Kutschpeitsche
          　 …鞭索が長い
　　(3)犬鞭：(英)dog-whip　(独)Hundepeitsche　
　　(4)牛追鞭：(英)bull-whip　(独)Ochsenpeitsche　

(Ｂ)植物製：笞 (英)rod, switch　(独)Rute, Gerte　(仏)verge
　　　　杖：　(英)cane　(独)Rohrstock　(仏)canne, trique
　　　　白樺の笞：(英)birch　(独)Birkenrute　
　　　　茨の枝を束ねたもの：(独)Dornengeissel　
　　　　榛の笞：(独)Haselgerte　
　　　　榎の笞：(仏)Perpignan
　　　　乗馬笞：(独)Reitgerte　

『ヤプー』には、ヤプーのペニスから作った「珍棒（チンボー）」なる鞭が登場します。

その製法と機能については　第14章 二つの手術　第５節 如意鞭「珍棒」
性能については　第21章 畜籍登録手続き　第５節 権利宣言の鞭
をご参照ください。

この「珍棒」の発想につき、本章附記第五で次のように記しています。

附記第五（シャムボク）
アフリカの草食巨獣のpenisから作られるシャムボク(sjambok)別名キボコkiboko(いずれも土語)について、文献から引いておこう。

「犀（ライノ）の体のうち最も尊重される部分はペニスである。これから作られるシャムボクsjambokは世界中で最も恐ろしい鞭なのだ。

それは先の方へ次第にとがってゆく細長い鞭で、鯨骨のように柔軟で鋼鉄のように強靭である。一鞭（ひとう）ちで人間の肉を骨まで切り裂く。シャムボクで鞭（ぶ）たれるくらいなら射殺されるほうがましだ。

河馬（ヒッポ）や麒麟（ジラフ）の生皮（ハイド）からも作られるが、いちばん残虐な、いちばん喜ばれるやつは犀のペニスを陽に乾し伸ばして作られるシャムボクである」（以下略）
（アレクサンダー・レイク『アフリカの猛獣』）

penisを鞭に見立てることは文学上の比喩として愛用されるが、比喩にとどまらず、現実に、penisは立派な鞭になるのである。

『家畜人ヤプー』における私のtimbow（チンボウ）空想も、どうせ架空ながら、その程度には根拠あるものであることを知っておいていただきたいので、あえて附言しておく。