Der Liliputaner
 Zeichung von W. Schertel (第�V巻p 145)

『手帖』のキャプション
『米国秘密クラブの実態』（本文参照）の表紙　

【馬・註】『手帖』本文
マイケル・リーの『秘密クラブの実態』(The Velvet Underground ) (挿入写真参照)によれば、≪ワンダの会≫というSMクラブの女性主宰者も、「男性は劣等動物です。社会の真に要求しているのは、支配的女性です」と断言し、さらにこう述べる。

「女性が男性を自分の意力により完全に服従させるという心理的瞬間がいったん到来すると、当然のことながら、女性はその後の支配をしだいに拡大させてゆき、結局男性をその本来あるべき隷属的地位にまで追い落としてしまいます」

Eine modern Omphale KUPFERSTICH NACH O.SOLOMON. 1867 (第�V巻p 200向い)

【馬・註】
沼は本章附記に次のように記しています

第一（サクス・ローマ―のSumuruシリーズ）　サクス・ローマ―のSumuru（ヒロインの通称）もののピカレスクな連作は、わが国にはあまり知られていないが、この意味で注目すべきである。

このヒロインは、稀世の美貌と超凡の才能と神秘的な心的能力とを有する女性で、女性支配の実現せぬ限り人類に平和なしとし、美しい女性による世界支配のための新宗教の教祖となる。

そこでは、美しい男女の結合のみが認められ、勧められるが、この教団Order of Our Ladyは女権革命のためには現行法律との抵触を恐れないし、醜い男性を殺すことは目的に合するから平気で罪を犯す。
（中略）
The Fire Goddess, The Sinister Madonna…といった一連の作品は、彼女の教団とスコットランドヤードの探偵との死闘を描くが、教団内の彼女の専制ぶりは、ハガード『洞窟の女王』のアッシャを思わせ、教団の男性奴隷化の儀式など楽しい場面が少なくない。

【馬・註】
本章附記第二に「顔面騎乗」という用語が出てまいります。

第二（男性妊娠妄想）―田沼『タツノオトシゴ考』　子宮外胎盤については、ハクスリイの『Brave New World』以来、類想が多いし、私の『家畜人ヤプー』における「子宮畜(ヤプム)」もその一種であるが、ここでは、田沼醜男『タツノオトシゴ考』（≪奇ク≫）の咽喉部子宮空想を私なりに補充しつつ紹介しておきたい。

…タツノオトシゴやヨウジウオでは、雄が雌から受精卵を貰い、口から育児袋に入れて孵化させる。まるで雄が妊娠出産するようなものだ。人間も、男性と女性の職能が逆転するためには、単に女性が妊娠から解放されるだけではいけない。男性が妊娠しなければならない。そこで、男性の咽喉部を人工子宮に変えて受精卵を育てる生理学的処置を施す法が発明される。
（中略）
白人女性専用の産院には奉仕希望の日本人男性がたくさん詰めかける。彼らは白人夫婦間の愛の結晶を口腔に下賜され、咽喉部子宮に保持し、タツノオトシゴのように里親(ホスト)として育てるのだ。

金髪女性の雪白の股に顔面騎乗され、愛液射出によって妊娠させられることは、彼らが夢に憧れるところだが、その恩恵に浴しうるのは、特に素直で従順で白人崇拝度の高いことがあらかじめテストされた童貞男性に限られる。

【馬・註】
田沼醜男『タツノオトシゴ考』は、≪奇ク≫1965年9月号に掲載された「マゾヒズム天国」中の一部でございます。
そこでは、件の一節は次のように記述されております。

彼女達の雪白の肌に顔面騎乗されることは日本の男の誰しもが夢にまでみて憧れる処だけれど、誰にでもその機会が与えられるわけには行かない。その恩典に浴するのは特に素直で従順で白人崇拝度の強い男性に限られる。

これを、沼の

金髪女性の雪白の股に顔面騎乗され、愛液射出によって妊娠させられることは、彼らが夢に憧れるところだが、その恩恵に浴しうるのは、特に素直で従順で白人崇拝度の高いことがあらかじめテストされた童貞男性に限られる。

と比べますと、沼の方が遥かに文章に張りがあり、流麗で、かつ色艶に富んでいる・・・と感じますのは、愚仙人だけではありますまい。

「雪白の肌」に顔面騎乗されるより、
「雪白の股」に顔面騎乗される方が、Ｍ値はずっと高く、かつ肉感的だし、

「日本の男の誰しもが夢にまでみて憧れる処だけれど」よりも
「彼らが夢に憧れるところだが」の方が簡潔・流麗です。

「誰にでもその機会が与えられるわけには行かない」なんて、余計な一文を削り、その代わり、
「愛液射出（エジャキュレーション）によって妊娠させられる」という、原文にはない要素を加えております。

「白人崇拝度の強い男性に限られる」も、
「白人崇拝度の高いことがあらかじめテストされた童貞男性に限られる」に修正されています。

つまり、田沼の原文を、沼がいわば添削してみせたわけで、無礼と言えば無礼なふるまいですわな。
まあ、田沼＝天野氏が沼に一目置いている、という間柄だからこそ許されることなんでしょうけれど。

ところが、一事が万事。沼は、似たような振る舞いを、天野氏以外に対してもやっちゃったりなんかして。
その結果、相手がプライド高かったりすると、

「くそ〜〜沼の野郎！　いまに見てろよ！」

なんて反感を買い、憎まれて、機会があればギャフンといわせてやりたい、なんて不穏な願望を抱かせたりしかねません。

そうなると、沼がうっかり隙でも見せようものなら、そこを突かれて、刺されたりします。

沼の正体が暴露された一件、そういう憾み辛みが大きな要因じゃあないかな。
そうだとすれば、沼自身の不徳が招いた災厄だったと言えましょう。