第１巻：金髪のドミナ
（第１章～第31章）

第28章　性的隷属の王侯たち

【内容】　傾国の美姫（びき）への君主の性的隷属現象を論ず
本章では、
　・古代インドのネンダ王と王妃
　・フランス王ルイ十五世(1710-1774)とデュパリ伯夫人
　・バイエルン王ルドヴィヒ一世(1786-1868)とローラ・モンテス
　・セルビア王アレクサンドル一世(1888-1934)とドラガ王妃
　・唐の高宗(649 - 683)と則天武后
　・古代中国の桀王（けつおう）（BC1728-BC1675）と末喜（ばっき）
　・古代中国の紂王（ちゅうおう）(BC1105 - BC1046)と姐妃（だっき）
　・古代中国の幽王（ゆうおう）(- BC771)と褒?（ほうじ）
　・ギリシア神話のヘラクレスとリュディア女王オンファーレ

に言及しています。
 28-1

『手帖』のキャプション
"Tiens, la France, ramasse ma pantoufle !"（本文参照）（Ａ・ヴィレット筆、一八八七年）

【馬・註】
この挿画について、『手帖』本文では以下の如く説明しています。
ルイ十五世のデュパリ伯夫人に対するや、奴僕（ぬぼく）同然だった。フックスは、彼女がベッドからスリッパを蹴投げて
「ほら、国王(ラ・フランス)や、拾っといで」
と犬に対するように命令しているヴィレット筆の諷刺画（挿画）を示している

↓28-1の大判画像です

Die Weiberherrschaft in der Geschichte der Menschheit（「女天下」)のキャプション

Die Dubarry: "Tiens, la France, ramasse ma pantoufle!" Historische Szene A. Willette. 1887 (第Ⅱ巻p687)




  28-2

『手帖』のキャプション
ローラとルドヴィヒ　（一八四七年のライプチッヒ漫画。本文参照。狆が王冠をつけて王様であることを示してある）


【馬・註】
この挿画について、『手帖』本文では以下の如く説明しています。
ルドヴィヒ一世は、アイルランド生れのスペイン舞姫ローラ・モンテスの深淵のような明眸（めいぼう）に迷った。
その言いなり放題になって、尊貴な家門ランズフェルト伯爵家を嗣(つ)がせ、この俄(にわ)か造りの女伯爵から名前を呼び捨てにされながら、彼女の美しい足を手入れしたり、その靴を盃にして酒を飲んだり、彼女の臥（ね）ている寝台を支えたりするマゾ行為に及んだ。
陰では王は「ローラの犬」と渾名(あだな)され、彼女が王冠を戴いた狆（ちん）ころを鞭で仕込んでいる諷刺画さえ描かれた（挿画参照）

↓28-2の大判画像です

Die Weiberherrschaft in der Geschichte der Menschheit（「女天下」)のキャプション

Lola und Ludwig. Holzschnitt. Leioziger Karikatur. 1847 (第Ⅱ巻p687)



28-2 と同じ趣向の風刺画




  28-3

『手帖』のキャプション
ローラ・モンテス肖像　（シュティーラー筆）（バイエルン王ルドヴィヒ一世の命により、Ｊ・シュティーラーが描いたもので、現在もミュンヘンの「美女画廊」Shonheits-Galerieにある）

↓28-3のカラー大判画像です
「アイルランド生れのスペイン舞姫ローラ・モンテス」とは何のことかよくわからんが・・・
ローラ・モンテスは、本当の名前をエリザベス・ロザンナ・ギルバート（Elizabeth Rosanna Gilbert）といい、1821年２月17日にアイルランドのスライゴ州に生まれました。でも、成長したのち、スペインの舞姫ローラ・モンテスと名乗ったのです。
それにしても、凡百の著述家なら、「ダンサー」とか「踊り子」とか言いそうなところを、「舞姫」とは、流石沼さんですな。細かいことだけど。

バイエルン王ルドヴィヒ一世は、１８４６年、初めてローラに会い、忽ちぞっこん。王の寵愛を得たローラは、政治にも口を出し、１８４８年、バイエルンに三月革命が起こる一因になりました。ローラ相手にM行為に耽り、国を傾けた彼に、「Ｍ王」の称号を捧げよう。
それにしても、この王様、女性上位サロンのＭ男にいそうな風貌ですな。何となくだけど。

ちなみに、本章の元になったのは≪奇ク≫１９５３年８月号に掲載の「あるマゾヒストの手帖から　（三）」中の「マゾヒスト国王」で、そこではもっぱらローラ・モンテスとルドヴィヒ一世の逸話が詳細に記されています。

≪奇ク≫のバックナンバーをアップされている奇特な外部サイトの、該当ページへのリンクを張りました。一読されてはいかがでしょうか。
　　マゾヒスト国王　A　　マゾヒスト国王　B　



LOLA　MONTEZ with WHIP
1845年、ローラが２４歳の時の絵




１８４８年の３月革命から逃れてアメリカへ。アメリカでは大衆紙が彼女にまつわるゴシップを面白おかしく書き立てました。ローラは舞台に馬鞭を携え、彼女の気に障った者を打ちすえた、なんて噂が広まりました。










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