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| 『女教師ブラジル日記』は、南米植民地で農園を営むドイツ人家庭に家庭教師として雇われた或女性の日記。これは、沼正三が 『ある夢想家の手帖から』 第112章 植民地生まれの女性 に発表したもので、原文はドイツ語であるという。 ブラジルには、アフリカからたくさんの黒人奴隷が輸入されていた。 大地主の妻がドイツ人で、子女にドイツ語教育を授けようとして旧教徒の本国人を招いたのであった。 以下は、ブラジルに来て一年後、故国バイエルンの女友達に人間馬騎乗の要領を報じた手紙の数節 |
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| 私が令嬢･令息だけでなく、もっとほかの者まで仕込んでいるといったら、びっくりなさるでしょうが、本当なの。両脚の馬たちに乗られ方を仕込んでいます。この農場では黒奴の肩は馬の背に並ぶ交通機関だと、この前お知らせしたわね。あの時は私はそういう風習に偏見を持っていたけど、今は公正に見られるわ。私たちの靴を舐めることが彼らの精神の健康によいと同様に、被乗勤務は彼らの肉体の健康に役立つの。交通機関としてベストの肉体を選び出すためばかりでなく、奴隷たち全てを精神も肉体もベスト・コンディションにおくために、私たちは彼らに次々に被乗勤務を命じなければならないわけ。農場中、コーヒー栽培作業を見廻るだけなら、馬に乗ってでも差支えはないらしいのだけど。 黒奴に乗るには、腰布を取らせて素裸にしてから、特別の鞍を肩に担わせ、しゃがませて肩の上に跨る姿勢で腰をおろすの。股をあまり開かないし、馬に乗るより気楽な感じだわ。調教済奴隷と違って、新入りの中には、乗られてからも言うことをきかない若者たちもいるけど、そういう奴らを乗りこなすのには馬勒を使うの。そうすると造作なくおとなしくなってしまうわ。これは鼻の軟骨につけた輪の左右から細い鎖を引いて端をあぶみに固定させる方法で、これで女騎手（のりて）は物凄い支配力を獲得するわけ。だって足で軽く触れるだけで頭をぐいと下に引っ張って苦痛を感じさせるんですもの。でも私は鼻輪にすぐ頼ることはしないの。乗り馴らすことで段々変えてゆくほうが正しい躾けでしょうし、私は女教師ですもの。わかるでしょ。 毎日々々、こういうことが全て面白くてたまらないの。私は騎乗にとても熱心だから、調教中の奴隷のうちの一人だって、（被乗勤務の）服務が少ないなんて不平は言わないわ。女教師の立場からも、この教育（調教）は張合いがあるの。その教え子たちにだけは上級学校（高等訓練）が期待できるわけだし、生意気な口ごたえもしないから、結構可愛いくもあるわ。高等人より劣等人を教えるほうが楽しいなんて、奇妙に聞こえるでしょうけど、ほかの同僚（の女教師たち）も、同意見なのよ。 |
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朝晩令嬢と並んで一鞍責めることにしてるけど、そのたびに必ず鞍革に滲（し）みとおるまで玉の汗をかかせるんだから、黒奴たちは贅肉のない見事な体格を私たちの拍車と鞭とに感謝すべきだと思うわ。令嬢は、この課目でだけは私の先生になれるんで、少々お得意なの。なにしろ子供の時から乗り慣れてる。この間朝の騎乗で手綱を交換している時聞いたことだけど、彼女の愛馬は、乳母の年長の息子で、彼女が物心ついた頃には、もう生きた木馬として子供部屋の床を彼女を背に這い廻ってたそうよ。 奥様は、いちばん頑丈な奴らに乗って毎日原野に遠乗りよ。いちばん辛い目にあうのはこの連中ね。なぜって奥様は、体重も体重だけど、それ以上に女騎手（のりて）としてきびしいの。帰って来た奴の太腿や脇腹が血だらけ、みみず腫れだらけなのが厳格さの証拠よ。拍車や鞭でばかりじゃない。彼女のため鼻中隔の（鼻輪用の）孔を奥のほうへ穿ち直さなければならなくされた奴隷も何人かいるわ･････ |
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