Ｓ女子大秘話
作・たぬべえ
７

桜子と俊之のお話
「プレイは月一回よ。
そのくらいなら我慢してもらえる？」
桜子が言った。

「ホントにいいの、僕で？」
「うん。いいよ。俊之君がいい」

「僕もあれから、ＳＭに関する本を読んでみた」
「読んだんだ。
で、どうだった？」
「いや、そんなに何冊も読んだわけではないけれど。
世間には痛みが快楽な人もいるって」
「うん。知っている。
苦痛系のマゾヒストね」

「桜子さんの相手にはそういう人のほうがふさわしいんじゃないの？」
「ＳＭって十人いれば十色なんだよ」
「十人十色？」
「苦痛系もいれば、従属系もいるし、恥辱系もいる」
「従属系？」
「それが女王様と奴隷の関係かな」
「なるほど」

「恥辱系は、恥ずかしいことに興奮する」
「恥ずかしいこと？」
「女の子の前で、おちんちん出したり、射精したりね」
「それはわからなくないかな」
「やったね、あの合コンの時」
「あまり思い出したくないよ」

「私は恥辱系も好きよ」
「興奮はしたけれど、もう勘弁して欲しい」
「でも、興奮はしたんだ」
「大勢の女性の前に、みじめなものをさらすと、興奮はしますよね」

「でももう止めて」
「えっ？」
「俊之君のおちんちん、他の女の子に見られるのは嫌」
「小さいもんね」
「そうじゃなくて。マゾヒストの中に、寝盗られ系もある」
「寝盗られ系？」

「彼女が他の男に寝盗られるのに興奮する奴。
私は嫌。
私も俊之君がいるから。
他の男とはセックスもプレイもしない。
私もしないから、俊之君も他の女の子とは、セックスもプレイもしないでね」

「しない、けど」
「俊之君がもし浮気したら、その時は許さない」
「鞭？」
「そんなんじゃ済まない。殺す」

「えーっ！！」
「浮気しなきゃいいだけでしょう」
「まぁ。それに俺のチンコじゃ浮気も出来ないしね。
でも、桜子さん、他の男とプレイしないって？」

「うん、ＳＭクラブは辞めた」
「そうなんだ」
「いいお金にはなったけれどね」
「どうするの？」
「とりあえず節約。
そんなことよりも、私もＳＭについて、まだ知らないこと多いの」
「そうなんだ」

「何も男性に苦痛を与えるのが楽しいんじゃないの。
ただ、私のために男性が耐えてくれているのがわかると、その……」
「興奮するんだ」
「私を辱めてどうするのよ」
「ごめん」

「一緒にいろいろ楽しいことしようね」
「いろいろ？」
「そう。いろいろ」
「ちょっと不安かも」

「プレイなしでのセックスは普通にしようね。
私たち、恋人だし」
「俺で満足出来る？」
「寝取られ系は嫌いだけど、俊之君がやりたいって言うなら」
「そ、それは嫌だよ」
「嘘よ。
絶対にやらないわよ。
それに、玲子さんたちが言うほど、俊之君、小さくないよ」
「それは……」

「ホントだって。
女王様のバイトでチビチンコンテストっていうのの審査員やったんだ。
スゲエ、チビチンの男たちが集まっていっせいに出したんだけど。ぜんぜん俊之君のほうが大きいから安心して」

安心していいのか。
そんなイベントに関わったことがある桜子が、ちょっぴり怖い俊之だった。

俊之と桜子のプレイは三回目だ。
月一プレイだからと、二回目のプレイはＳＭの部屋のあるホテルでやった。

桜子は俊之は奴隷ではないと言ったが。
「プレイの雰囲気は大事だから」
俊之が言った。
俊之はプレイのはじめに、桜子の足元に土下座をした。
「桜子様、ご調教をお願いいたします」
俊之は言った。

プレイは桜子のためにやっているんじゃない。
俊之が「ご調教」をお願いするのだ。
だがマゾヒストでない俊之には、ハードな鞭も蝋燭も辛い。

三回目のプレイは桜子の部屋に行った。
「今日はここでやるから」
「はい」
俊之は座敷にパンツ一丁で跪いた。

「だから、縛りはなし」
「はい」
「わかる、意味？」
「……」
「自分の意志で、私の鞭を逃げずに受けられるかしら」
そう言って桜子は口に笑みを浮かべた。

十発、二十発。
手でよけられないよう、手にだけ拘束具をはめ、頭の後で両手を組み、床に跪いた状況で、桜子は俊之を鞭打った。

十発目を過ぎたところから、桜子はさらに技を繰り出す。
鞭を俊之の体に巻きつけたり、首から肩、横腹、痛みを感じるところを強く攻めた。

10分くらいの鞭で、とうとう俊之は気を失った。
前回も縛られたまま最後に気を失ったのだ。
今回のほうが早く、そのまま床に倒れた。

桜子は口に水を含むと、俊之に吹き掛けた。
「あと、5分我慢したら、聖水で起こして上げたけれど」
桜子は言った。
「今日はこのくらいで、やめとくわ」

俊之は起き上がり、ソファーに腰をおろした桜子の前に両手をついた。
「やっぱ、僕は駄目かも」
「うん。駄目かもね」
俊之は頭を下げて床にこすりつけた。

「顔上げて」
俊之が顔を上げると、平手打ちを十発くれた。
そして、俊之を抱きかかえて、胸に導いた。

「駄目なんて言わないで。
あなたがいないと、私が駄目になるから」
桜子は言った。
「私のために頑張って」

それから、桜子は30分以上掛けて、俊之の体にオロナインを塗った。
「お正月、どうするの？」
「お正月？予定はないけれど」
「大晦日。除夜の鞭、やりたい」
「108発？」
「そのくらい、今の俊之なら、どうということないよ」
確かに。
いや、どれだけすごい鞭が飛ぶのかわからない。

「108発、気を失わなかったら、それから三日間、二人でまったり過ごそう」
「気を失ったら」
「その時は……」
三日間の奴隷調教か。

そして、四月からは俊之も桜子も社会人になる。
俊之は新聞社に、桜子は広告代理店に就職が決まっていている。
忙しい仕事で、二人の時間がとれるのかもわからないけれど。

「だから、お正月は二人で過ごしたいから」
「わかりました。
除夜の鞭。頑張るよ」
「じゃ、今日は、頑張ったご褒美」

「えっ、頑張れなかったから、お仕置きじゃないの？」
「お仕置きもよくなってきたんでしょう」
そう言って、桜子は笑いながら、鞭の傷に爪を立てた。
痛いのは、やっぱり辛い。と、俊之は思った。

８⇒



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