いじめっ娘

作・たぬべえ

４

翌日、体育倉庫に要一は呼ばれた。 瑞樹優奈に学級委員、それと保健教師の高橋保奈美がいた。 「高橋先生まで。 参ったなぁ」 「まぁ、監督責任があるからね」 保奈美は言った。 「校長先生には内緒で」 「場合によってはね」 「言うこときかないと」 優奈が言った。 「なんでも言うこと聞くよ」 要一は全裸になって四つ這いになった。 保奈美が靴のまま、要一の背中を踏んだ。 あー、やっぱ大人の踏みはいいなぁ。 勃起して、カウパー垂らした。 「先生、かなり重症じゃない？」 保奈美が言った。 「私たちもそう思ったんで、今日、高橋先生を呼んだんです。 最初はいたずらだったのに、山田先生、マゾプレイにはまっちゃったみたいで」 優奈が言った。 要一が優奈たちの奴隷になって一ヶ月が過ぎた。 晴美たちとはその後は進展がない。 卓が少し出世したらしく、忙しいらしい。 なら、晴美とデートしたいのだが、 「四人で遊ぶのが楽しいって、麻衣子と卓が言うから。 しばらく待ってね」 と晴美に言われれば待つしかない。 その間、優奈と数人の女子からは、保健室でほぼ毎日いたぶられ続けていた。 そんなある日、要一は校長室に呼ばれた。 校長室には、校長、教頭、生徒指導の秋田、それに知らない男もいた。 なんだよ、呼び出されて、男ばかり四人かよ。 「教頭先生、お願いします」 校長が言った。 「山田先生、あなたクラスでいじめがあったのはご存じですね」 いきなり教頭がいじめの話をしはじめた。 いじめ？　 一体なんのことだ。 いじめられているのは俺だぞ。 えっ、まさか、バレたのか。 要一は言葉を濁して答えたが。 「隠さなくてもいいでしょう」 教頭は言った。 「まぁ、隠したくなるのはわかりますがな。全部話してくださいよ」 えーっ、おじさん四人の前でマゾ告白をするのか。 これはたいへんなことになった。 かなり恥ずかしい上に、おそらくそのあと、待っているのは懲戒免職だ。 「今度の件は、保健室の高橋先生のご指導をいただいて」 要一は言った。 保奈美を巻き込むつもりはなかった。 ただ、せめてマゾ告白する場におじさん四人でなく保奈美がいたら、少しは楽かもしれないと思った。 「なるほど、保奈美先生ですか」 教頭が笑って言った。 「保奈美先生は慣れていらっしゃる。 僕もいじめの件で以前に相談にのってもらったことがありました」 秋田が言った。 な、なんだ、ナマハゲ、お前も同士か。 すると、校長以下、全員、保奈美の奴隷なのか。 もしかしたら、懲戒免職は逃れられるのか。 「いや、私たちも一時は困惑していたんです」 教頭が話しはじめたことは要一には意外なことだった。 要一のクラスでいじめがあった。 もちろん生徒同士でだ。 いじめられていたのは、クラスでもわりとイケメンな三村隼人だ。 最初は男子による普通のいじめだったが、女子による性的ないじめに代わった。 具体的な話は教頭はしなかった。 「三村君は山田先生に訴えたのですが、先生は、そんなことがあるものか、と一笑にしたそうですね」 えーっ、そんな訴え、聞いてない。 いや、待て。 聞いたような気もする。 だが、クラスでいじめがあれば、要一の評価点が下がるから、 「そんなことがあるものか」 とつい言ってしまった。 要一の記憶が蘇った。 「三村君は仕方なく、校長室に訴えて来ました」 校長が言った。 「私どももことは重大だと思ったのですが、なにぶん御用繁多」 なんなんだ、御用繁多って。 武士か。 三村の訴えは無視された。 要一も無視したのだが、校長たちも無視した。 「そこで三村君は教育委員会に訴えて来ました」 もう一人の男が言った。 こいつは教育委員会の職員か。 「私たちが調査をはじめようとした時に、三村君から連絡がありまして、いじめはなくなった。 山田先生が解決してくれたと」 「わ、私！」 要一は驚いた。 なんで私が解決って。 えーっ、優奈たちが三村をいじめていた女子たちで、いじめのターゲットが要一に代わったので、三村へのいじめがなくなった、ということか。 そうか！　 最初に匿名のいじめメールが来たのは誰かの告発、で、女子トイレで、優奈が三村をいじめていた。 それを要一が見付けた。 最初の三村の訴えは忘れていたが、すべてはそういうことだったんだ。 「とにかく、君のおかげで、いじめ問題は解決したんだ。 ありがとう」 教頭が言った。 「我々も胸をなでおろしている」 校長が言った。 おいおいおい、御用繁多とか言って、何もしなかったくせに。 教育委員会だって、似たり寄ったりだ。 おそらく、三村の訴えなど聞く気はなかったろう。 女子による男子への性的いじめだなんて、世に出たらスキャンダルだ。 いや、女子生徒による教師へのいじめとなったら、もっと大事だ。 おそらく要一の件がバレても、この人たちがもみ消してくれる。 いや、もみ消すのはこいつらの保身であって、おそらく全責任を要一に押し付け、依願退職か、なんか別の理由つけて懲戒免職かだ。

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