いじめっ娘

作・たぬべえ

２

「ねえ、山田さん、女の子に土下座ってしたことある？」 石田晴美に言われて、要一は少し動揺した。 晴美と要一はミステリー作家の堂ヶ島雲見のファンで、そのＳＮＳで知り合った。 ＳＮＳのコメントに返信したりするうち、 「会いましょう」 ということになり、二三度会いお茶を飲んだ。 そして、今日は、ちょっと高めのフレンチレストランで食事をした。 ほとんど堂ヶ島の小説の話しかしないのだが、今日は話が盛り上がり、レストランのあるホテルのラウンジで酒を飲むことになったのだ。 その時に晴美が言った。 「それって、学生時代にってことかな？」 要一が言った。 「学生時代はあるんだ」 「中学の時だよ。 スカートめくりやって、女の子泣かしちゃって。流石に土下座で謝った」 「許してもらえた？」 「どうだったろう。忘れちゃったな。はははは」 許してもらえなかったんだよな、あん時は。 土下座のあと、尻叩き100回の刑だった。 「今はどうするんですか、クラスの男子生徒がスカートめくりなんかしたら」 「今の男子はしませんよ」 そうなんだよな。 Ｄ高校が真面目なのか、男子はすこぶる品行方正で。 「もししたら？」 「でも土下座なんか強制したら、問題になっちゃうからね。 丁寧に説諭するだけです」 「じゃ、女子が個人的に制裁してたら？」 「止めて説諭です」 ははは。こっちが女子に土下座させられた、なんて話は晴美には絶対に内緒だ、と要一は思った。 しかし、土下座の話なんかして。 もしかしたら、晴美は土下座して頼めば落ちる女なのか。 その水向けで、土下座の話なんかしているのか。 いや、男に土下座を求める女ってなんだ？　 単に女性優位を求めているのか、 もしかしてＳ趣味なのか。 「晴美さんは男性を土下座させたことはありますか」 要一は思い切って聞いてみた。 「させたことはありません。 勝手にしてくる男性はいるわ」 「それはそうですね。 晴美さんほどの美人なら。 僕だって晴美さんになら土下座したいですよ」 言ってみた。 どういう反応するんだろうか。 「全裸土下座」 晴美がボソっと言った。 「はぁ？」 「全裸土下座なら」 「ぜ、全裸土下座？」 つい先日だ。 優奈たちに全裸土下座させられたのは。 なんで晴美はそんなことを言うんだろう。 「普通の土下座なんて、つまんないから。 男性の全裸土下座って見てみたいの」 「何か見返りはあるの？」 「そうね。全裸土下座して頼まれたら、言うこときくかもよ」 そう言って、ニッコリ晴美は笑った。 ホテルの駐車場。 トイレ横の自販機のあたりは、夜になるとほとんど人通りはない。 「ここなら、全裸土下座しても人には見られないよ」 晴美が言った。 流石にオープンな場所での全裸土下座にはためらいがあった。 「部屋とらないか」 出費は覚悟だ。 「うーん、ホテルの部屋じゃ、つまんない。 外だから面白いのよ。 さぁ、恥を捨てられるかの勝負よ」 晴美は言った。 恥というか。 一応、要一は教師だから。 でもここなら人に見つかることはない？ だったら、こんなチャンスはないぞ。 酒も入っていた。 「わかった」 意を決して、要一は服を脱いだ。 エロいビキニブリーフ一枚になった。 「あはははは。何それ、受ける」 晴美が笑った。 「じゃ、脱ぐから」 要一は覚悟を決めた。 一気にブリーフを脱ぎ、床に膝をついて頭をさげた。 チンコは多分見られていない。 「ねえ、おちんちん勃ってない？」 晴美が言った。 「そんな、勃起なんてしていないよ」 要一は思いっきり勃起していた。 チンコは太股ではさんで、晴美に見えないように隠した。 「嘘。全裸土下座で勃起するなんて、山田さんってマゾ？」 晴美がからかうように言った。 「いやいや、勃起してない」 「じゃ、見せて。おちんちん見せなさいよ」 「それは恥ずかしいから勘弁して」 山田は床に両手をついて頭をさげた。 「まぁ、可哀想だから許してあげるね」 そう言うと、晴美はハイヒールで、頭を下げている要一の頭を軽く踏んだ。 要一は上目でちらっと晴美のスカートの中をのぞいた。 うわーっ！！ 勃起していたチンコがさらにでかくなった。 太股でこすれて、少し気持ちよくなった。 やばい。 このままだと射精しちゃう。 「晴美さん、もういいでしょう。 パンツ履いても」 そうだよ。 万が一、他人に見られたら大変だもの。 「いいよ」 そう言うと、晴美は、少し離れて後を向いた。 武士の情けを知る女と見た。 要一は急いでブリーフを履きズボンを履いた。 「ねえ、やっぱり勃起してたよね」 歩きながら、晴美が言った。 「うん。ちょっとだけ」 要一は言った。 「マゾじゃないけれど、女の子に全裸土下座はやはりドキドキしたし」 「私もＳ女じゃないけれどさ」 晴美が言った。 「でも男性がひれ伏すのは気分がいいものよ」 「土下座は屈辱的だけど、晴美さんになら、またしますよ」 要一は言った。 なんとしても晴美を逃がしたくなかった。 「やっぱり山田さんって、ちょっとマゾなんじゃない？」 「ぶたれたりするのは嫌ですよ。 でも晴美さんになら、ぶたれてもいいかなぁ」 「ホント？」 「あっ、いや、ぶたれたいじゃなくて、ぶたれてもいいです。 あくまでも消極的な願望です」 「じゃ、今日はとりあえず往復ビンタいい？」 「はい」 なんで、こうなるんだろう。 もっと違う展開もあるだろうに。 そう思った要一の頬に、バシッ、バシッ。 往復ビンタが炸裂した。 「次は何をしましょうか。 あなたと会うのが楽しみね」 晴美はそう言って、地下鉄の駅へと消えて行った。

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