「エーゲ海に捧ぐ」

チチョリーナが人間馬を乗りまわす

エーゲ海に捧ぐ

Dedicato al mare Egeo

【データ／DATA】
監督：池田満寿夫 (Ikeda Masuo)
出演：イロナ・スターラ  (Irona Staller)
　　　クラウディオ・アリオッティ  (Claudio Aliotti)
音楽：エンリオ・モリコーネ  (Ennio Morricone)

１９７９年／日本＝イタリア／１０９min.

【物語／STORY 】
ローマに住む貧乏画学生ニコスは下宿先の娘と肉体関係を持つが、大金持ちの画商の娘アニータに誘惑され、アニータの女友達らとともにエーゲ海にあるアニータの別荘に行く

【クライマックス／CLIMAX】
アニータはローマ市内にある一流ホテルの豪華なスイートルームに住んでいます。
ある日、彼女はニコスをその部屋に招待します。風呂を使った後、ソファーに全裸で座るニコス。アニータは黒いスリップ姿です。
アニータは、ニコスと斜向かいのソファーに腰掛け、その脚線美を見せ付けるかのように脚を高々と上げて、ストッキングを脱ぎます。
「あなたの絵、全部売ってってパパを口説いたわ」
「すげえや、ありがとう！」
「主人と奴隷って遊び、あなた知ってる？　私のお気に入りの遊びなの」
　ゆっくりと下着を外していくアニータ。投げられた彼女のガータベルトを受け取り、鼻を埋めるニコス。

　カット変わって隣のベッドルーム。全裸で四つん這いになったニコスの背に、これも全裸のアニータが跨がって、楽しいお馬さんごっこです。

「そう、あなた私の奴隷よ」
勝ち誇ったように叫ぶアニータ。
彼女の体重を四肢に支え、絨毯の上を何度も何度も這い回らされて、牡馬クンはこぼします
「膝が痛くなっちゃった」

そこへ、突然ドアが開きます。現れたのは、ルーム・サービスのボーイさん（と言っても、鼻髭生やしたオジさんですが）。
全裸のアニータ、少しも慌てず、ニコスの背に跨がりつづけて悠然と言います。
「シャンペーンが来たわ。ここに置いといて」

ボーイさんがシャンペンの瓶とグラスをサイドテーブルに置いて去った後も、お馬さんごっこは終わりません。
「それ進め！」
「止まって！」
命令通り牡馬クンがテーブルの側で止まると、アニータは彼の背に跨がったままシャンペーンをグラスに注ぎます。そして、お尻に敷いたお馬さんを進ませつつ、グラスを傾けるのでした。

【寸評／COMMENT 】
　音楽を担当したエンリオ・モリコーネは、映画音楽の世界では有名な作曲家です。この映画のために彼が作った「牡馬に跨がる牝馬（Cavallina a Cavallo)」は、ホテルの部屋でアニータがニコスを誘惑するあたりからＢＧＭとして流れ始め、曲のタイトル通りのシーンへとなだれ込みます。
　牡馬を演じるのは２１才のたくましい美男俳優。
跨がる牝馬は２２才の肉体派女優。
どちらも丸裸ですが、肉体美溢れる二人の戯れは、エロチックではあっても卑猥な感じはありません。まさに「愛の馬(equus eroticus)」という表現がピッタリあてはまる、微笑ましく美しいラブ・シーンです。

【話題／TOPICS】
　四年前（１９９７）に亡くなった画家で作家の池田満寿夫が、自らの芥川受賞作を映画化した作品。ローマとギリシャを舞台に、スタッフも俳優もほとんどがイタリア人です。

　アニタ役のイロナ・スターラは、後にチチョリーナの愛称で親しまれ、世界的に有名なポルノ女優に。ついにはイタリアの国会議員に選ばれました。

【鑑賞／SOURCES 】
●バンダイビジュアル株式会社からビデオ・テープが出ていました。
●テレビの洋画劇場などでこれまで何度か放送されました。ただ、肝心のお馬さんごっこのシーンが全部カットされていてがっかりするしたこともあります。