金蹴り

作・たぬべえ

「金蹴りがしたい」 突然、早紀が言った。 「なんだよ、それ」 旬人が聞き返すと。 「ごめん。 聞かなかったことにして」 と言って、早紀は自転車で行ってしまった。 なんだよ？ 旬人は高校二年、春に同じクラスになった早紀に告白して、付き合い始めた。 ショートカットで丸顔の可愛い女の子だ。 付き合うったって、帰宅前に30分、土手を歩いて話をするのと、休日に図書館で一緒に勉強するだけだ。 来年は受験で、会える時間も減るだろう。 なんとか一歩進みたいけれど、進めない間に夏休みも過ぎ、秋になっていた。 そんな時に、早紀が「金蹴りがしたい」と言った。 スマホで検索したら、すぐにわかった。 今は便利だよ。スマホがあればなんでもわかる。 夜中のアニメ「爆発女子高生Ｑ」というのが流行っていて。 昨日の放送で、主人公の女子高生がセクハラ教師に金蹴りをお見舞いするシーンがあった。 セクハラ教師がピョンピョン飛び跳ねて悶絶し、かなり面白かったらしい。 マジかよ。 痛いという話は聞いたことがあるが、旬人は金蹴りをされたことはなかった。 絶対、痛いだろう。 当たり所が悪くて、金玉潰れたら。 一生セックス出来ないぞ。 って、早紀に金蹴りさせてあげる気かよ。 なんで痛い思いをしなきゃいけないんだ？ だが、早紀に一歩近付くチャンスじゃないか。 なんでもきっかけが肝心だ。 だが、痛いのも嫌だし。悶絶している情けないところを見られたら、嫌われるかもしれない。 うーん、ここが思案のしどころだ。 やはり情報収集だな。 スマホでさらに検索する。 ヤバイサイトに導かれた。 ＳＭのサイトだ。 パンツ一丁の男が出て来た。 女子高生が数人。 パン一男が土下座して 「金蹴りしてください」 とお願いする。 「立て」と命じる女子高生。 ズボッ！　凄い音がして金蹴り炸裂。 二発、三発と我慢の男。 四発目に男は悶絶し、倒れた。 そこへ女子高生たちの執拗な蹴りと踏みつけ。 あっ、パンツ見えた。 ヤバイ、勃起した。 うーん、あんな凄い金蹴りでも、三発くらいは我慢出来るのか。 早紀の蹴りなら、優しく触るくらいだから、大丈夫だ。 よし。やってみよう。 次の日。 「早紀ちゃん、昨日のことだけれど」 「えっ？」 「金蹴りしたいって」 「嫌だ。ちょっと言ってみただけよ。忘れて」 「いや、俺、早紀ちゃんのためなら、金蹴りされてもいい」 「馬鹿言わないでよ。 ちょっとアニメ見て、興味持ったけれど、もう忘れて」 「でも」 「しつこい。 忘れてって言ってるの！」 早紀を怒らせた。 まずいぞ。 そんなつもりじゃなかったのに。 そうだ。 昨日の金蹴り動画だ。 男がパンツ一丁で土下座して 「金蹴りしてください」 って頼んでいた。 そうなのか。 金蹴りは、男が頼んでしてもらうものなんだ。 パン一にはなれないが、土下座くらいなら。 旬人は早紀の前に正座して、両手をついて頭を下げた。 「早紀ちゃん、お願いだ。 金蹴りしてください。 お願いします」 「バッカじゃないの？　 金蹴りして欲しいって変態？　 もう、旬人とは付き合わないよ。 さよなら」 早紀は走り去った。 えっ？　どういうこと？ こうして旬人の初恋は終わった。 「おい、旬人」 家に帰ると、女子大生の姉が声掛けてきた。 「なんだよ、姉ちゃん」 「お前、変なもの好きなんだな」 「なんだよ？」 姉はなんと、旬人のスマホを持っていた。 「あっ、それは！」 姉は例のＳＭサイトの金蹴り動画を見てしまったようだ。 「姉ちゃん、それは違うんだ」 「違わない、違わない。 金蹴り好きなら、私がやってやるよ」 「違う、違うんだ」 スボッ！　姉の金蹴りが旬人の股間に炸裂した。 旬人は悶絶した。 こんなの三発も耐えられるわけねえだろう。

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