いじめっ娘
作・たぬべえ
７
「山田先生、お久しぶりです」
「えっ！」
面接に来たのは瑞樹優奈だった。

「瑞樹さん！」
「先生、もしかしてクビになったの？」
「違う違う。ここの経営者にヘッドハンティングされてね」

「私じゃ不採用だよね」
「そんなことないよ。
君は頭がいいし。
でも、この塾は勉強の出来ない子に教える塾で」

「私、そういうのも得意よ。
先生、知っているでしょう。今の私の彼氏」
そうか。
瑞樹が学校でいじめていた三村だ。

「あのね、先生、勉強なんて誰でも教えられるのよ。
ようは、やる気を出させるにはどうしたらいいか」
「どういうことだ」

「三村君は男子にいじめられていたの。
だから、私と仲間が、いじめていた男子たちの前で三村君をいじめて、大勢の女子の前でオナニーさせて。
それ見たら、男子はいじめを止めたのよ。

三村君が成績が悪かったのは、いじめられて悩んでいて勉強が出来なかったから。
いじめがなくなって、私は三村君を励ましたの。
ちょっとエッチな餌で。
そしたら三村君も成績が上がって、大学にも行かれた。

つまり、私たちが三村君をいじめたのは一度だけ。
私、三村君をずっと好きだったの」

「そうだったのか」
「先生だって、私と会わなければ、あのまま、ただのことなかれ主義の教師で終わっていたかもよ」

「えっ？」
「私、知ってるわ。
三村がいじめを訴えたのを、先生が無視したの。
私、腹が立ったわ。
教育委員会の顔色伺って、何もできない先生に」

「瑞樹……」
「自分がいじめられたら、どんな気分になるか、教えてあげたら。
何よ、結構楽しそうで。

いろんなことに目覚めて。
あげく、塾の校長先生に出世？」

「経営は大変なんだよ」
「ねえ、今の収入、教師の何倍？」
「参ったな」

しばらくして、三島卓と初瀬麻衣子の盛大な結婚式が行われた。
卓の会社の同僚で、和田さんと石田晴美は出席、卓の友人であり、麻衣子の上司ということで山田要一も出席した。

二次会は、卓や麻衣子の大学時代の友人が集まった。
また、塾の講師たちも来た。
要一と晴美、和田が話しているところへ、瑞樹優奈が現われた。

「私、山田先生の塾で講師をしています、瑞樹優奈です」
「瑞樹さん、ずいぶんお若いですね」
和田が言った。
「ええ。二十歳になったばかりです。
あっ、二十歳ですから、お酒も飲めますし、口説いても大丈夫です」

「じゃ、口説いてみるかな」
和田が言った。

「難攻不落ですけど」
「やりがいがあるね」
「大丈夫ですか、和田さん」
要一はかなり心配して言った。

「僕は独身だけど、会社員かっこヒラだから。
口説いても、本気になっちゃ駄目だよ」
和田は笑った。

「かなり面白そうです」
優奈は興味深気に、和田を見た。
「私はあなたのほうがかなり面白そうだけど」
晴美が優奈に言った。

要一はただただあせっていた。



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